ロカビリーという言葉を聞いて思い浮かべる音楽は人それぞれだと思います。最後のロカビリーブームが去って久しい今、ロカビリーと言ってもピンと来ない人がほとんどでしょう。ある人にとっては平尾昌章やミッキーカーチスなどの日本のオールディーズかも知れないし、ストレイキャッツを思い出す人は多いかも知れません。僕らが熱中し、楽しんでいるロカビリーとは、1950年代半ばにほんの短い間流行した、アメリカ生まれの音楽とそれに付随する生活様式(服とかクルマとか)のことを指しています。
今は黒人音楽、白人音楽の境がなくなり、みんな好きな音楽を聴いたり演奏したりしていますが、それが完全にわかれていた当時、カントリー音楽などの白人音楽をルーツに持つ白人ミュージシャンが黒人のブルーズ音楽を聴き、その良さに惹かれて自分の演奏に取り入れた結果できあがったのが典型的なロカビリー音楽といっていいでしょう。そしてそのロカビリー音楽の典型例として最も有名なのはやはりエルヴィス プレスリーだと思います。今簡単に手に入るものとしては、RCAの"THE COMPLETE SUN SESSIONS"というCDがありますので是非聴いてみて下さい。世界初のロカビリーヒットとなったシングルのA面とB面がCDの1曲目、2曲目に入っています。まだ10代だったエルヴィスと、地元のヒルビリーバンドに在籍していたギタリストのスコティ ムーア、ベーシストのビル ブラックが、1954年、テネシー州メンフィスの小さなスタジオで録音したものです。
サン レーベルのオーナー、サム フィリップスは数年間メンフィス周辺の黒人音楽のレコードをリリースしながら、黒人のフィーリングを持った白人歌手がいれば一儲けできるはずだと考えていて、その中でエルヴィスを見いだしたのでした。音楽的な特徴としては、共にヒルビリーの奏法であるギターのギャロッピング奏法とベースのスラッピング奏法を用いて、アップテンポのシャッフルリズムでブルーズまたはカントリー曲を演奏するといった感じです。ヴォーカルではヒーカップ(しゃっくり)唱法が特徴的であり、エルヴィスの曲でも聞くことができます。
エルヴィスのバンドは3人編成(後にはドラムを加えた4人編成)でしたが、一口にロカビリーと言ってもメンバー編成や使用楽器、曲調、リズム、歌詞の内容など様々であり、50年代後期から60年代はじめのいわゆる初期のロックンロールにくらべてヴァラエティに富んでいるところも魅力の一つです。
40年以上たった今、遠く離れた日本の片田舎でロカビリー音楽が生き続けているというのも、ちょっと面白いとは思いませんか?