この記事は、フランスのホットロッド/カスタム雑誌、ロールズ&プリーツの中で、僕が気に入った記事を訳した物です。

若い奴らに伝えたいこと
"ダーティ ダグ" アンダスン


(ニューヨーク州シェナンゴウ郡のビーヴァーの池は、著者、ダグ アンダスンの1931年 A型クープに申し分のない背景を与えている。)

私はみんながそうだと認めるよりずっと前からホットロッダーであり続けている。1969年のウッドストックを覚えてる? 実はちょうどあの週末、あそこから65マイル離れたところでドラッグレースをやっていたんだ。そして、レースには勝ったよ。だけど、ロッダーを続けてきたことで金持ちには全くならなかった。皆さんのほとんどと同じように、節約し、貯めて、自分のロッドにつぎ込む分を何とかつくりださなければならなかった。それをただ買うことはできなかった。さらに、私の意見では、真のホットロッドは持ち主自らが作り上げる物である。ストリートロッダーと違って、ホットロッダーは自分の車の内も外も知り尽くしている。ナットとボルトの一つ一つまで。ホットロッディングとは、一つの態度だと思う。正しい態度を身につけているかいないか。ホットロッディングは単なるきれいな古いクルマよりはるかに上のものである。ホットロッディングとは、つまるところ、友人関係、必要なときに助けを借り、もっと大事なことは、求められたときに誰かを助けることである。私たちのほとんどは、自分のクルマが完成するまでには数多くの人に助けてもらっている。だから、完成したときには私たちは借りがあることになる。私たちがゴールにたどり着くために助けてくれた全ての人たちに対して借りがある。私たちは、助けてくれた人たちにお返しができないかも知れない。彼らは、感謝されることを望まないかも知れないし。そのかわりに、別の人を助けてあげることが最高のお返しになるんじゃないだろうか。それが今私がここでやってることだ。皆さんの中で、ホットロッドがすごく欲しいけど、実際にはどのようにしたらいいかよくわからない人を助けること。
もしあなたが年輩の方なら、自分のクルマを作るときにアドヴァイスとか力仕事とか、もしかしたらあるパーツとかを他の人からもらったことがないだろうか? そして、始めたばっかりの若い人たちは将来他のロッダーが自分のホットロッドの夢を実現しようともがいているときには、自分が頑張って手に入れた知識を、伝えることがあるだろう。この精神に乗っ取って、私は、何か役に立つと考える人たち全てにこの考えを伝えたい。人生のほとんどを溶接したり、機械をいじったり、また組み立てたりしてきて、いろいろと難しいものも作ってきたけど、その中でも、ほんとにいいロッドをスクラッチ(何もないところ)から作り上げることは、最も大変だけど最も個人的に満足が得られ、報われることだと思う。スクラッチから作ることは、よく勉強して、間違いをおかし、人格を作り上げ、同時にホットロッドを作り上げることを意味する。もしそうだとしたら、私がここで述べることに対して、皆さんは何か感じることがあるだろう。

下調べをしよう
組立を始める前に、どんなスタイルのクルマが一番好きか、それをどう応用するかを考えよう。始める前にクルマの完成図を頭に描いておく必要がある。そうでなければ、ちょうど良いドナー部品などを探し当てることはできないだろう。あなたのアイディアを絵に描いてみると良い。もちろん、後になって変更があってもいい。だけど、なるべくあなたの設計図にこだわって見る方が良い。調査と知識の代わりになるものはない。他には、インスピレーションを得るために古いホットロッド雑誌を見返すのもおもしろい。ほとんどのものは、新しいものよりも良い。

忍耐
ホットロッドを作るときに必要なことを最も良く表す一言を挙げるとすれば、それは忍耐である。これを守り通せば、完成する。これは保証する。だが、絶対に守り通さなければ、完成しないだろう。

自分の限界を知れ
それが自分で自由に使える機械、器具であれ、自分自身の能力であれ、それをよく知ることが必要だ。そして可能と思えば前進してそれらの限界を広げてあなたの計画の一部を完成させればよい。限界を広げるということは成長するということだ。それは真のホットロッダーになる方法を学ぶということだ。ロッダーは生まれてくるのではなく、作られるのだ。溶接の仕方を学びなさい。切って、曲げて、成形して鉄板からものを作る方法を学びなさい。やる価値が必ずある。

ロッドを作ることはロケット科学ではない
しかし、高度な職人技がすたれることは無いし、後になって必ず誇りに思うことができるものである。私が見たところ最近の風潮として、若い奴らが"ラットロッド"と称してクルマを仕上げていて、中にはちょっと危なっかしいのもある。"あの当時"、私たちはぼろいクルマを作っていたわけではない。私たちは知識も工具もお手本もほとんど無かったが、自分にできる精一杯のことをやっていた。今日のあなたがたのように、過去の雑誌の記事や、良く作られたクルマお手本にすることはできなかった。しかしいつも自分たちのベストを尽くしていた。
あるクルマがプライマー仕上げで完成してないように見えるからといって、それがガラクタのように作られたということにはならない。良いホットロッド、真のホットロッドは熟練した技術でしっかりと作ってある。

目標に達するクルマをめざせ、ガラクタじゃなく
ほんとのことを言うと、私はプライマー色のクルマは大好きだ。将来は自分用に1台作ろうと思ってるくらい。プライマーのクルマは今よりもっと単純で楽しかった頃を思い出させるだけでなく、今世界中にうようよいる、金の鎖を着けたやつらに強くアピールすることができる。そうでなくても、20ドル以下、1時間で全塗装ができる。すごいことだ。ただ、プライマーの下は、しっかりと作ったいいクルマであること。

小さな仕事を全てやりとげること
あなたのロッドを作ることを沢山の小さな問題を片付けることと考えると良い。しなければいけない小さな雑用というふうに。それぞれを別個のものと考えて、一つを成し遂げる度に、あなたが最終的には道路を走らせることになる、そのホットで速いクルマの完成に一歩近づくと思えばいい。それを続けていくことだけ忘れなければ、やることが無くなってしまい、クルマは完成してしまうだろう。

締め切りを設けるな
締め切りは良くない。なぜなら、それに間に合わないとすごく落ち込むからだ。自分のクルマを作ることを本当に楽しむべきだ。そしてただ一つずつ雑用をこなしていくことだ。それを続けること。それが結局はあなたの初乗りにつながる。やったね! それがあなたの報酬だ。そして自分自身で作り上げるんだったらやる価値は十分ある。出来上がったクルマを買う人たちはこの快感を味わうことはない。それは私たちだけのものだ。だからやる価値がある。

クリエイティヴであること
あなたが作りたいもの、例えばブラケットなんかを絵に描いたら、ボール紙で型紙を作って、あなたのアイディアがうまくフィットするか試してみるといい。何かを初めて作るときにはいつでもボール紙の型紙を作りなさい。これこそが設計の方法である。鉄板で間違って投げ出すよりも、厚紙で失敗した方が簡単で、しかも安く付く。ボール紙の型紙に関しては言っても言い尽くせない。アイディアを目に見える形にし、想像力を実現し続けるのに本当に役立つ。ボール紙は持ち上がる様々な問題に対して、いくつもの解決法を見つける手助けにもなる。私は鉄板にいく前に満足できるまで2つか3つの型紙を作ることもある。つまりは私は型紙の"プロ"なのだ。

やりくり上手であること
他にお金を節約し本当にユニークなロッドを作る方法としては、トラディショナルな素材以外の物に目を向けることだ。多くの物はタダで、ほとんど正しい格好をしている。真のホットロッディングとは独創的であるということだ。神様があなたに授けた脳ミソを使いなさい。鍋やフライパン、クッキーシートやアルミの切れ端はちょうど良いというだけでなく、安くもある。安いのは大好きだ。例えば、私のクルマには、ホッケーのパックや機械用のライトとスイッチ、停止標識、速度標識、踏切標識のアルミ板、ハーレーのパーツ、トイレ用の曲がったパイプ、その他諸々の変な物が使われている。私はこのような奇妙な物を使うのが大好きだ。安いだけでなく、後になって話の種になるから。
ここアメリカで皆さんがいいロッドを作るためにどれだけ身を捧げているかということを考え、そしてイギリスやヨーロッパの皆さんが必要な部品を集めるために経験しなければならないことを考えると呆然となる。アメリカ以外のどこかで、アメリカ車のまずまずのパーツを手に入れることはそう簡単ではないと思う、でも国内でもそう簡単じゃないんだ。もしできるなら、廃車置き場を探してみるといい。パーツじゃなくて形を見つけるために。自分が欲しい何かに近い形の物を探しに。フェンダーのエッジや天井のパネル、クウォーターパネルなんかが形を保っていることが多い。これらの鉄板の部品があれば、欲しい部品を成形する時間を大幅に短縮させるだけでない。もしかしたら最初は成形することができないかもしれないけど、それはOK。スクラップを使うことで形を"盗む"だけでもいい。ただ、あなたが作ろうと選んだクルマのスタイルに忠実であることに努めなさい。
古いアメリカ車の、本物の鉄製のボディは、皆さんにはおなじみのウィスキーサワーを教会で見つけるくらい珍しい。65〜70年前のボロボロの鉄板の代わりにファイバーグラスを用いても別に悪いことは全くない。それが必要ならどんどん使えばいい。その素材を使ってあなたが何をするか、それが肝心だ。
最近イギリスで作られた本当にかっこいいロッドの記事をよく見かける。それらの多くは"正しいスタイル"に見える。しかし中には"当時の"アメリカで作られた物よりウィールベースが長い物もある。もしスタイルを真似するつもりなら、そうした方がいい。あなたのクルマのプロポーションに注意を払った方がいい。これは大事なことだ。特にピリオドパーフェクトな(時代考証に忠実な)ロッドを作るときにはなおさらだ。インチ単位まで、よく調べること以外にない。がんばって。

切る前にいつも3回考えること
あなたがすることが、後々道路に走り出たとき、他の機能部品やその働きにどう作用するかを考えること。多くの場合、うまく行くためには3、4回は挑戦することになるだろう。負け犬のように感じることはない。最初にプロジェクトを進めて、解決するときというのは大体そんなもんだ。結局一度もやった事がないんだから。たまには運良くたったの2回で解決できることもあるだろう。そりゃ良かった。でもそんなことは滅多にないことだ。こんなことわざを聞いたことある? "3度目の正直"。

ネットワークを形成して、友達をつくろう
どこに行けばいいものを見つけることができるか、また、それらをどうやって作り上げればいいかを知るのに役に立つ。印刷物を読みあさり、インターネットをチェックしなさい。見るべき所を見れば、非常に多くの知識が得られる。そして知っての通り、私たちはみんなクルマにべったりという点では共通している。探し回ったり、情報交換することは、新しい友達をつくって、求めていたちょっとした部品を見つけるのに、最良の方法だ。最も大切なことは、友達をつくることである。これは全く楽しいことだと思う。つまらない報酬目当てのヤツはいないと思う。自分が得るのと同じ位友人に与えよう。真のロッディングとは兄弟のようなものだ。そして仲間意識だ。真のロッダーたちは、どんな細かい物までも盗んでしまうドブネズミのような真似はしない。いいかい? そういうもんだ。私からの説教はこれでおしまい。

自分のロッドを作りなさい。友達をつくり、なにかを学んで、楽しむことが大事だ。私が述べたことでみんな何か考えたんじゃないかな。さあ、作業に戻りなさい。あなたが全部やり終えたら、それを引っぱり出して走らせてごらん。私がケツに蹴り入れてやる。

エディターよりひとこと
この記事をタイプしている時いくつかの事が頭をよぎった。僕は"オールドタイマー"としての経験は無いけど、ロッドやカスタムを作ってる人たちみんなにいいアドヴァイスだと思うので紹介する。

ガレージを居心地のいい場所にしなさい
あなたのクルマに対して作業することが退屈であるべきではない。もしそう感じるなら、多分あなたのガレージがあまり居心地のいい場所でないのだろう。まずそこを片付けて、その辺にころがっているガラクタを全部取り除くこと。工具をまとめて、さがしやすくすること。壁にピンナップポスターを貼るといい。小さい冷蔵庫を買って、アイスとビールを詰めること。寒い冬の季節のために小型のヒーターを置きなさい。居心地のいいガレージでは、作業が済んでしまってもまだ作業を続けたい気がするだろう。

あなたの妻/ガールフレンドの事を考えること
あなたの空いた時間を全部ガレージで過ごすなら、彼女にはあまり評判が良くないはずだ。十分な時間を彼女と過ごすこと。毎晩、または毎週末をクルマの作業にあてることがないように。また、あなたのプロジェクトを彼女に手伝ってもらうように頼むことはいつでもいい考えだ。彼女の助けが必要と知ったら喜ぶはずだ。ただ、ペーパー掛けなんかの (ひっでえ!)、あなたがしたくない仕事を彼女にさせないように。